昨今求められているタイプの日本酒

今回のブログは日本酒です。
群馬県前橋市にある柳澤酒造さん(明治10年創業)で、醸される日本酒結人(むすびと)です。
昨年雑誌サライにて、今飲むべき30本に選ばれ一気に話題となった酒蔵です。
特集も組まれました。
結人としての生産がわずか数十石なので、あまり市場にはまだ出回っていない印象です。


いただいたのは、27BY中取り生酒純米吟醸です。
精米歩合55%
アルコール分16~17度
日本酒度+2
酸度1.50

あまり純米吟醸とは思えない飲み口です。
まず口に含むと吟醸酒特有の、スッキリとした吟醸香はあまりやって来ません。
最初に甘さが来ます。
ただ決してベタつく甘さではなく、しっかりとした米の旨みを持った甘さです。
爽やかな苦味・酸味・香りも少し感じつつも、あくまでもベースは甘口・旨みになります。
後味はスッキリとしているので、不思議とさっと次の一口にまたいける印象です。
つまみは最低限の濃口のものをあてにして、日本酒の旨さをしっかりと味わいたくなるタイプです。
記憶に残る日本酒としては、鍋島あたりが近い印象でしょうか…。でも鍋島ともまた違う、しっかりとした個性を持っています。
はっきりとこれと似ている、というタイプの日本酒は無いように思います。
唯一無二です。

昨今は一時期の淡麗辛口ブームから、埼玉県の神亀酒造さんが火付け役となり純米ブームとなっています。
しっかりとした米の旨みを持った、上質な日本酒が求められている傾向にあります。
群馬県はかかあ天下と言われ、全国に先駆けて女性の社会進出が早かった土地柄です。
共働きの家庭が多かった為に男たちは自分で肴をみつくろい、塩味の効いた味の濃い簡素なつまみで晩酌を楽しんでいました。
そんな風土もあり、昔から甘口のお酒が愛されて来ました。
なのでむしろ時代が群馬県の甘口のお酒に、追い付いて来たと言うべきでしょうか…。

ただ昔のままの味では、全国区では通用しません。
この蔵はまだ40代の若い兄弟が社長・酒造責任者となり、蔵を支えています。
この結人はあえて大量生産せずに、この兄弟が質にこだわって醸している逸品です。
そんな心意気をビシビシと感じ取れる、本当に旨い日本酒です。
日本酒度は+2であるものの、それを感じさせない旨口の酒。
本当に素晴らしいと思います。

私も今飲むべき30本の酒。
まったく意義無しです。
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インドの青鬼

今では日本クラフトビール(一昔前で言う地ビール)界において、埼玉県川越市のCOEDO(コエド)ビールと並び世界に称されるビール長野県軽井沢町のヤッホーブルーイング。
世界的な数ある金賞を受賞している会社です。
よなよなエール水曜日のネコ・東京ブラック等様々な味わいのある、良質ビールを次々と生み出しています。
コンビニやスーパー等で、商品を見かける方も結構多いかと思います。
その中でも今回紹介したいのは、本格IPAビールのインドの青鬼になります。


このインドの青鬼も、4年連続モンドセレクション金賞受賞等数ある賞に輝いています。
IPA(インディア・ペールエール)ビールとは、18世紀のイギリスで長く過酷な航海の為に劣化しにくいビールとして造られた物です。
ホップをふんだんに使用している為に、苦味とコクが特徴となるビールです。
このインドの青鬼で言えば、通常のビールの4倍となるホップと2倍のモルトを使用して造られます。
更に品質も世界各国よりホップを厳選(アメリカ・イギリス・ドイツ・ニュージーランド等)し、
水は日本では数少ないミネラルを多く含むタイプの硬水浅間山の伏流水を使用してこだわって造られています。
これだけのこだわりのビールを、1缶267円で販売してしまうヤッホーブルーイングの良心的な価格設定にも感謝しつつ、今回試飲レビューをしたいと思います。


まず飲むスタイルですが日本で馴染みのあるのど越し重視の下面発酵ビール(ラガー・ピルスナー等)とは違い、味わい重視の上面発酵ビール(エール・スタウト等)の中のエールビールというタイプのビールになります。
なので美味しく飲む温度は、13度位が適温です(ヨーロッパで言う常温で、赤ワインの飲まれる適正温度)。
香りも良いので、少し口の大きめなグラスに注いでアロマも楽しんで下さい。
のど越しのタイプでは無いので、出来ればじっくりと味わって下さい。
炭酸も弱めです。
このビールの最大の特徴は苦味ですので、アタックはしっかりとした苦味が来ます。
その後から心地良い、フルーティーな味わいが追いかけて来ます。
このフルーティーさがあるので苦味は強いのですが、それほど飲みにくさは感じません。
アフターはスッキリとしています。
ビール・ウイスキー・焼酎乙類辺りが好きな方なら、この個性的な深い味わいにガツンとやられるかもしれません(笑)。
簡単に言ってしまうと、辛口や苦味の好きな方の為のビールでしょう。
好きな方にはこの深い苦味がフックとなり、やみつきになってしまうかもしれません。


食べ物の相性はヤッホーブルーイングの公式ホームページのように、カレー・餃子に合わせていいただいて良いです。
ただ私個人的にはゴーヤチャンプルー方式でビールを苦いゴーヤに見立てて、卵料理に合わせていただくのが良いように思います。
甘&苦MIXが、案外このビールの美味しい飲み方かと。
この方程式では無いですが、蕎麦なんかとも結構相性が良いです。


是非苦党辛党の本格的なお酒好きの皆様、試してみて下さい。
同じ上面発酵ビールとは言えギネススタウトのような濃厚な甘味は無いので、くれぐれも酒嫌いの方には飲ませないようにしましょう(笑)。


以上で今回のブログとさせていただきます。

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台湾のシングルモルトウイスキー

このブログでは、お酒を中心に時折グルメを混ぜながら、なるべくわかりやすい表現で、色々味わったものを紹介して行けたらと思います。


初回は台湾のウイスキーKAVALAN(カバラン)です。
ウイスキーが好きな方ならご存知かと思いますが、世界には5大ウイスキーというものがあり、それにあたるのがスコットランドアイルランド・日本・アメリカ・カナダになります。
通常の酒屋さんで販売している物も、大半はこの5国のウイスキーのみになります。
なので台湾のウイスキーというのは、非常に珍しい訳です。
このカバラン。2008年から販売を開始した、まだ新しいブランドです。ウイスキーは熟成させてからでないと販売出来ない酒であり、新しく会社を立ち上げるには非常にコストがかかります。

サントリーがその昔新規事業としてウイスキーを立ち上げようとした時に、初代工場長の竹鶴政孝さん(ニッカウイスキーの創始者)が本格派のスコッチにこだわり会社が傾きかけたのは有名なお話です。
他の酒類と違いこの辺りがウイスキーの製造販売の難しいところで、国がこの5国に片寄ってしまっているのもそんな背景があります。
そうした中での台湾ウイスキーカバランのチャレンジは、とても大きなチャレンジになるわけです。

このウイスキー更に凄いことに、雪山山脈の水を使用。原料から製造までオール台湾にこだわり、2年後の2010年にてスコットランドのバーンズ・ナイト(英紙タイムズ主催)のテイスティング大会にて地元銘柄を抑えて圧勝で優勝しています。
このメーカーの本気度が表れた、素晴らしい結果と言えるでしょう。
更に2011年IWSC金賞。
2012年IRSC金賞。
2014年IRSCとISCにてダブル金賞。
2015年にはWWAにてベストシングルモルト。IOWにてマスターディスティラーオブザイヤーを受賞するまでになっています。
本当に輝かしい実績です。


前置きが長くなりましたが、今回はこの台湾ウイスキーのテイスティングを書き込みたいと思います。

いただいたのはKAVALANシングルモルトウイスキーシェリーオークです。
数ある賞を受賞しているという事で、期待に胸を膨らませて飲みました。
飲み方はストレート・少し加水・トワイスアップ・ロック・ハイボールの5タイプで試飲しました。

タイプとすればサントリー山崎のヨーロッパ向けに出荷されている、山崎シェリーカスクに近い味わいです。丁寧なつくりは感じるものの、熟成期間も短いようでフレッシュな印象です。味とすれば現状山崎シェリーカスクの方が上でしょう。ちょうど妥当な表現をするならば、山崎のスタンダードをシェリーカスクにした感じでしょうか。酒精強化ワインのシェリー酒の甘く果実を思わせる上品な香りが、シングルモルトウイスキーに混じり合うもののまだ熟成感が低く、フレッシュでライトな味わいです。
飲み方とすればシェリー樽熟成の香りを生かす為に、少し加水・トワイスアップ・ハイボール辺りがこのウイスキーには合うと個人的には思います。
ただポテンシャルの高さは、充分に感じ取れる事が出来ました。
もう少し熟成を重ねれば、山崎の12年・18年クラスに肩を並べる味わいになるかもしれません。
ジャパニーズモルトに近いタイプという事もあり、日本人としては少し驚異も感じました。
いちウイスキーファンとすれば、また新たな楽しみが増えてとても好ましい事ですけどね。

まだ長期熟成物が無いのが少し寂しいですが、これから世界で活躍するウイスキーにきっとなって行くでしょう。
なるべく早く10年・12年熟成の物が飲める日が来る事を願っています。


今年は2017年なので来年辺りには…という期待も抱いて、今回のブログ掲載とさせていただきます。 f:id:fdtaka11:20170210200220j:plain